「あとで」はカレンダーに存在しない

「あとで返信する」「そのうち電話する」。こう決めた時点では、やるつもりは十分にあります。それでも実行されないのは、「あとで」という時刻がどこにもないからです。予定のない時間はほかの用事にすぐ埋まり、思い出したときには手が離せない、ということが繰り返されます。

先延ばしを減らすためにできることの 1 つは、やる気を高めることより先に、やるタイミングを前もって決めておくことです。

「いつ・どこで・何を」を決めると、実行されやすくなる

心理学者の Peter Gollwitzer は、目標を「〇〇する」と決めるだけでなく、「状況 X になったら、行動 Y をする」という形で前もって決めておく計画を「実行意図(implementation intentions)」と名付けました。1999 年に American Psychologist 誌に発表した論文では、こうした計画が、始めそびれる・気が散る・いつもの癖に流される、といったつまずきを越える助けになることを、一連の研究をもとに論じています。

その後、Gollwitzer と Paschal Sheeran は 2006 年に、実行意図についての研究をまとめて分析するメタ分析を発表しました。94 件の独立した検証をまとめた結果、実行意図を作ることは目標の達成に対して「中程度から大きめ」の大きさのプラスの影響(効果量 d = .65)を持っていた、と報告しています。

研究の説明によれば、前もって「この状況になったらこれをする」と決めておくと、その状況が来たときに気づきやすくなり、行動が始まりやすくなります。毎回「今やるか、あとにするか」を考え直さなくて済むわけです。

やることを「時刻つき」で書く

実行意図を日々のやることに当てはめると、書き方は次のようになります。

  • 「歯医者に電話する」→「明日 12:10、昼食のあと、自分の席で歯医者に電話する」
  • 「メールを返す」→「今日 17:00、会社を出る前に、取引先にメールを返す」
  • 「ランニングする」→「土曜 7:00、起きて着替えたら、近所の公園を 1 周走る」

ポイントは 3 つです。

  • 時刻を入れる。「午後」ではなく「15:00」のように、具体的な時刻にします。
  • 場所やきっかけを入れる。「昼食のあと」「家に帰ってかばんを置いたら」のように、毎日起きる出来事にくっつけると思い出しやすくなります。
  • やれる時刻を選ぶ。会議や移動と重なる時刻を選ぶと、また先送りすることになります。その時刻に手が空いているかを、カレンダーで確かめてから決めます。

項目そのものの書き方(動詞から書く、1 件 1 行にする)は、続くやることリストの書き方でまとめています。

最初の一歩を小さくする

時刻を決めても、やることが大きすぎると、その時刻になっても腰が上がりません。そこで、決めた時刻にやるのは「最初の一歩」だけにします。

  • 「企画書を書く」ではなく「企画書のファイルを開いて見出しを 3 つ書く」
  • 「部屋を片付ける」ではなく「机の上の書類を 1 か所にまとめる」
  • 「英語の勉強をする」ではなく「単語帳を 1 ページ開く」

始めてみると、そのまま続けられることがよくあります。続かなかった日も、一歩は進んでいます。「5 分だけやる」と決めて始めるのも同じ考え方です。

前の晩に、翌日の最初の一歩の準備をしておくのも有効な工夫です。必要な資料を机に出しておく、ランニングの服を枕元に置く、といった小さな準備で、始めるまでの手間が減ります。

決めた時刻に「気づける」ようにする

時刻を決めても、その時刻に気づかなければ意味がありません。カレンダーに予定として入れる、リマインダーに時刻を付ける、など、決めた時刻に知らせが来るようにしておきます。

ただ、通知は一度鳴って消えるものが多く、マナーモードや集中モードの間は音が出なかったり表示されなかったりします。通知を見逃しがちな人は、iPhone の「時計」アプリのアラームのように、止めるまで鳴り続ける仕組みを使うと、気づかないまま時刻が過ぎることを減らせます。iPhone で止めるまで鳴る知らせを作る方法は、通知を見逃す人のための「やるまで鳴る」リマインダーの作り方で紹介しています。

できなかったときは、次の時刻に移す

決めた時刻にやれないこともあります。そのときに「あとでやる」に戻してしまうと、元の木阿弥です。やれなかったら、その場で次の時刻を決め直します。「今日 17:00 は無理だったから、明日 9:30」のように、時刻から時刻へ移すのがコツです。

何度も移している項目は、時刻の選び方が合っていないか、項目が大きすぎるか、そもそも今やる必要がないかのどれかです。週に 1 回、まとめて見直すと気づきやすくなります。やり方は週 1 回 10 分の見直しをどうぞ。

まとめ

  • 「あとで」ではなく、「いつ・どこで・何を」を決めて書く
  • 時刻は、実際に手が空いている時刻を選ぶ
  • 決めた時刻にやるのは、最初の小さな一歩だけでよい
  • 決めた時刻に気づける知らせを用意する
  • できなかったら、次の時刻に移す

まずは、今「あとでやる」と思っていることを 1 つ選び、今日か明日の時刻を付けてみてください。

出典

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