結論:車のメーターは「実際より低く表示しない」ように作られている
車の速度計には、表示する速度が実際の速度を下回ってはならないという基準があります。そのうえで「どこまで高く表示してよいか」の上限が決められています。だから多くの車では、メーターの数字が実際の速度(GPS で測った速度に近い値)より少し高めに出ます。
国連の規則 No. 39 の基準
自動車の国際的な技術基準を定める国連欧州経済委員会(UNECE)の規則 No. 39(速度計)は、5.4 項で次のように定めています。
- 表示される速度は、車の実際の速度を下回ってはならない
- 試験速度で、表示速度 V1 と実際の速度 V2 は 0 ≦ V1 − V2 ≦ 0.1 × V2 + 4 km/h の関係を満たすこと
たとえば実際の速度が 100 km/h なら、表示は 100〜114 km/h の範囲、実際が 50 km/h なら 50〜59 km/h の範囲が許されます。試験速度は車の最高速度によって決まり、最高速度が 150 km/h を超える車では 40・80・120 km/h です。
日本の基準(道路運送車両の保安基準)
日本では、道路運送車両の保安基準第46条が、速度計を「平坦な舗装路面での走行時において、著しい誤差がないもの」と定め、細かな基準を国土交通省の告示(道路運送車両の保安基準の細目を定める告示)に委ねています。
- 新車の型式の審査など:告示の別添88「速度計の技術基準」は、国連の規則 No. 39 と調和した基準で、「速度計の指度は自動車の走行時の速度を下回ってはならない」とし、0 ≦ V1 − V2 ≦ V2/10 + 4(km/h)を求めています。型式の指定などを行う場合以外は、上限が V2/10 + 6(二輪自動車などは + 8)に読み替えられます(告示第70条)。
- 検査での確認:2007 年 1 月 1 日以降に作られた自動車(二輪・三輪などを除く)は、速度計が 40 km/h を指したときに速度計試験機で測った速度 V2 が 10 ×(V1 − 6)/ 11 ≦ V2 ≦(100 / 94)× V1 を満たす必要があります(告示第148条・第226条)。計算すると、メーター 40 km/h のとき実際の速度は約 30.9〜42.5 km/h の範囲です。
どちらも、メーターが実際より高めに出ることは一定の範囲で認め、低く出すことは認めない、という考え方です。
ほかにもずれる理由
車側の理由
基準の試験は、自動車メーカーが設定したタイヤを付け、決められた空気圧で行います。一般に、タイヤのすり減りや空気圧、サイズの違いでタイヤの外径が変わると、メーターの表示と実際の速度の関係も少し変わります。
GPS 側の理由
GPS の速度にも誤差と遅れがあります。GPS.gov によると、スマートフォンの GPS の精度は開けた空の下で典型的に半径 4.9 m 以内ですが、ビル・橋・木の近くや屋内では悪くなり、建物で反射した電波(マルチパス)でも誤差が出ます。加速・減速中は表示が少し遅れ、トンネルでは止まります。詳しくはGPS の速度はどこまで正確かをどうぞ。
運転中に従うのは車のメーター
運転する人が見るのは、車のメーターと前の道路です。日本の道路交通法第71条第5号の5は、自動車・原動機付自転車・自転車を運転するとき、停止しているときを除いて、持ち込んだ画像表示用装置に表示された画像を注視しないことを定めています。違反には罰則があります。
- GPS の速度は同乗者が見る参考値。助手席や後部座席で楽しむもの
- 運転する人が見たいときは、安全な場所に止まってから
- 車のメーターと GPS が数 km/h 違っても、それは正常の範囲であることが多い
船や列車、ランニングなど、車のメーターがない場面では GPS の速度が手軽な目安になります。単位の換算はkm/h・mph・ノット・m/s の換算早見表にまとめています。